コーデックは動画制作の縁の下の力持ちです。あなたが素晴らしいショットを撮影したり、ビデオを編集したりするために創造力と実践的なスキルを発揮している間、コーデックは背後で記録、編集、共有を可能にしています。しかし、多くの映像制作者はコーデックが何であり、どのように機能するのかをよく知りません。コーデックについて知らなくても多くのことはできますが、一度理解すれば、制作ワークフローをより一層向上させることができるでしょう。
コーデックとは何か、そしてなぜ必要なのか?
簡単に言うと、コーデックとはデータを特定の方法でエンコードおよびデコードするためのソフトウェアです。「コーデック」という言葉は、「coder/decoder(コーダー/デコーダー)」から作られたものです。コーデックは、RAW動画を扱いやすいデジタル形式に変換(エンコード)し、必要に応じて再び視聴可能な形式に戻す(デコード)役割を果たします。
なぜコーデックは映像制作者にとって、とても重要なのでしょうか?以下、その理由を3つ見てみましょう。
- ストレージ
コーデックを使用すると、RAW動画ファイルのサイズを大幅に減少させ、SDカードや他のストレージデバイスに保存できるようになります。さらに、多くの場合、目立った品質の低下を伴わずに圧縮することが可能です。これが、コーデックが圧縮にとって非常に重要である理由です。
- スピード
このようにデータを変換することで、コーデックはカメラやデスクトップもしくはノートパソコン、編集ソフトがファイルをより迅速にダウンロード、編集、アップロードできるようにします。
- 互換性
制作の段階によっては、次に使用するNLE編集ソフトやオンライン動画配信プラットフォームとの互換性を持たせるために、特定のコーデックを使用する必要がある場合があります。
コーデックとコンテナの違い
コーデックについて調べると、よく「コンテナ」と一緒に言及されることがありますが、その違いがすぐには分からないこともあるかもしれません。コーデックはビデオを特定の方法でエンコードおよびデコードするためのソフトウェアですが、コンテナは動画ファイル、音声ファイル、メタデータなどのすべてのデータをまとめて保存する「ラッパー」の役割を果たします。このコンテナがデータの配信と再生を可能にします。多くの選択肢がありますが、最も一般的なビデオフォーマットはMP4とMOVのコンテナを使用しています。

最も一般的な動画コーデック
最も一般的なビデオコーデックを理解するためには、まず「ロッシー圧縮(非可逆圧縮)」と「ロスレス圧縮(可逆圧縮)」という用語を学ぶと良いでしょう。名前の通り、これらの用語はエンコードもしくはデコードの過程で失われるデータの量を示しています。
- ロッシー圧縮
ロッシー圧縮のコーデックは、RAW動画を最終的なビデオに変換する際に、元の情報や品質が技術的に減少します。
- ロスレス圧縮
しかし、ロスレス圧縮のコーデックを使用すると、RAW動画から最終フォーマットに変換する際に情報が失われることはありません。
- 視覚的ロスレス圧縮
視覚的ロスレス圧縮のコーデックは、技術的にはロッシー圧縮のコーデックでありながら、画質の劣化がないとされています(例:ProResやDNxHR)。
ロッシー圧縮のコーデックを避けるべきだと感じるかもしれませんが、画質の劣化があまり目立たないことが多いため、ストレージの節約、処理速度の向上、互換性の確保などの利点がその欠点を上回ることがよくあります。

一般的なロッシー圧縮のコーデック
- H.264
- H.265
- MPEG-4
- XAVC (Sonyのカスタマイズ版H.264)
- VP9
一般的なロスレス圧縮もしくは視覚的ロスレス圧縮のコーデック
完全なロスレス圧縮:
- H.264 Lossless
- H.265 Lossless
- JPEG 2000
- OpenEXR
視覚的ロスレス圧縮:
- Apple ProRes (422, 422 HQ, 4444, 4444 XQ)
- Avid DNxHR/HD
どのコーデックを選ぶべきか?
一般的なコーデックの選択肢をいくつかご紹介しましたが、どのコーデックがあなたの用途に適しているかを見てみましょう。そのためには、コーデックが制作の各段階で異なる目的で使用され、それぞれ異なるコーデックの要件や名称があることを理解すると分かりやすくなるでしょう。
- 撮影時のコーデック: カメラで映像を記録する際
- 編集時のコーデック:編集やカラーグレーディングを行う際
- 配信時のコーデック:最終的な動画を配信する際
全ての3つの段階で同じコーデック(例えばH.264)を使用することは十分に可能であり、あなたのニーズに対して十分な効果を得られるかも知れません。しかし、撮影から配信までのコーデックに変更を加えることで、時間の節約とビデオ品質の向上の両方を実現できる可能性があります。
撮影時のコーデック
映像の記録に関しては、使用するカメラによって利用可能なコーデックが制限されることがあります。また、SDカードの速度制限やストレージ容量によって、特定のコーデックに制限されることもあります。しかし、非常にロッシーなコーデックで直接録画すると、最終的なビデオの潜在的品質に制限が直ちにかかることを理解することが重要です。後でファイルを再変換して情報を取り戻すことはできません。H.264のようなロッシー圧縮コーデックはウェブ配信には適していますが、H.264(またはその他のロッシー圧縮コーデック)で編集することは非常に制約が多い場合があります。しかし、ロスレス圧縮(または「視覚的ロスレス圧縮」)コーデックで撮影できれば、カラーグレーディングや編集の柔軟性が向上するなど、さまざまな利点があります。これについては、後ほど詳しく説明します。
外部レコーダー
ここで、Atomos Ninja Vのような外部レコーダーについて紹介します。
カメラのコーデックの選択肢が限られている場合や、SDカードの速度や容量が不足していて、ロスの少ないコーデックを使えない場合には、外部レコーダーへの投資を検討すると良いでしょう。多くの外部レコーダーはカメラでは利用できないコーデックを使える上、SDカードではなくSSDを使うため、速度が速く、コストも安く抑えられる場合があります。比較的効率の良い高品質な撮影時のコーデックを求めるなら、外部レコーダーを検討する価値があるでしょう。さらに、多くの外部レコーダーはモニターとしても使うことができ、非常に便利です。
まとめると、最適な撮影時のコーデックは、カメラの制限とストレージのサイズと速度を考慮した上で、最もロスレス、もしくは最もロスの少ないコーデックであるべきです。
撮影におすすめのコーデック
- Apple ProRes
- Avid DNxHR
編集時のコーデッ
編集時のコーデックとは、編集やカラーグレーディングの際に使用されるコーデックのことです。より圧縮されたコーデックは、より少ない情報量でより小さなファイルを生成するため、編集も速くなると考えるのは自然なことです。しかし、多くのロッシー圧縮のコーデックで使用されている圧縮方法によって、実際には逆のことが起こり得ます。
H.264は編集に適しているか?
H.264などのコーデックは、複数のフレームをグループ化する形式の圧縮を使用します。この方法では、いくつかのフレームが完全な画像を含み、他のフレームは画像の変更点や差分のみを含みます。これにより、似たような部分や静的な部分が各フレームで別々に処理される必要がなくなります。これをLong GOP録画と呼びます。この方法の利点は、ファイルサイズが大幅に削減されることですが、欠点は、NLE(ノンリニア編集ソフト)が再生や基本的な編集を行うために、すべてのフレームを解釈するためにかなり高いCPUとGPUの使用を必要とすることです。
一方、ProResやDNxHRなどのコーデックは、Intra-Frame録画を使用しており、各フレームを個別に処理します。これによりファイルサイズは大きくなりますが、編集がより効率的になります。
ロッシー圧縮のコーデックは、映像のカラーグレーディングの柔軟性も制限します。というのも、操作できる情報が少ないからです。あいにく、カラーや露出を調整するにつれて、映像が劣化していくのが分かるでしょう。
特別なコーデック
また、特定のシステムと相性が良くなるように設計されたコーデックもあることを覚えておくと良いでしょう。例えば、Blackmagic RawコーデックはDaVinci Resolveとの相性が良く、Apple ProResはFinal Cut Pro XやAppleデバイス上で動作する他のNLEとの相性が良いです
使用するNLEやコンピュータに応じて、撮影に選ぶコーデックを決定する際にこの情報を考慮した方が良いかもしれません。
もしIntra-Frameのコーデックで撮影が不可能な場合でも、プロキシファイルを使用することで、そのコーデックの編集メリットを享受することができます。一般的に、Final Cut Pro XやPremiere ProなどのNLEは、編集のために一時的なProResやDNxHRのバージョンを作成することが可能で、エクスポート時には編集内容を元の映像に適用します。この方法は、撮影時にそのコーデックでの撮影が不可能な場合に特におすすめです。
要約すると、編集時のコーデックは、Long GOP録画ではなく、Intra-Frame録画に対応し効率的に編集できるように設計されたコーデックが最適です。
編集におすすめのコーデック
- Apple ProRes
- Avid DNxHR
配信時のコーデック
名前の通り、配信時のコーデックとは、オンラインやハードコピーでの配信(アップロードもしくは送付)に使用するコーデックのことです。ほとんどの映像製作者がオンラインでコンテンツをアップロードするため、ここではそのためのコーデックの選択肢に焦点を当てます。
完成したビデオはできるだけ高品質であるべきだと考えるかもしれません。しかし、オンラインにアップロードする際には、ファイルサイズを最小限に抑えるコーデックが非常に役立ちます。一方で、ロッシー圧縮のコーデックはアップロード時間を短縮するのに役立ち、アップロード後はユーザーが動画をスムーズにストリーミングできるようにします。画質の劣化が気になるかもしれませんが、配信段階での問題は編集段階ほど大きくありません。実際、H.264やH.265のようなコーデックは、目に見える画質を犠牲にすることなくファイルサイズを最小化するように最適化されています。ビットレートが解像度やフレームレートに比例して十分に高ければ、問題になることはありません。
要約すると、配信コーデックはロッシー圧縮でも問題ありません。ほとんどのオンラインプラットフォームで最適に機能し、アップロードの速度も速くなります。
オンラインでアップロードする際におすすめのコーデック
- H.264
- H.265
- VP9
結論
実際には、上記の内容は、それぞれのコーデックの目的には、可能であれば従うべき一定の原則があると考えることで要約できます。
- 撮影時には、カメラとストレージが許す限り最もロスの少ないコーデックで撮影しましょう。
- 編集やカラーグレーディングでは、ロスのないコーデックを優先し、撮影時にLong GOP録画を使用していた場合はプロキシの使用を検討しましょう。
- 配信時には、最終製品をよりロスの多いコーデックに圧縮しても構いません。オンラインでは画質の劣化が気にならず、アップロードが速くなります。
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